現実モデリング

データとかエンジニアリングとか健エミュとか

転職一年目エントリ(真面目)

そろそろ転職してから1年たつので、まじめな転職エントリを書く

学生のころ(就活前)

 学生時代前半の頃は拡大する自意識を持て余していた記憶がある。駅前の宗教勧誘に突撃してウィトゲンシュタインを引用して神学論争を仕掛けたり、Twitter上に攻撃的な文章を頻繁に投稿したりして、燃えるナイフのように周囲に悪意を振りまいていた。若かったからエネルギーが余っていたのに主体性がなく、エネルギーを発散できる場所はなぜか向こうからやってくると思っていた。振り返ってみて思うが、こういう「エネルギーを発散できる場所」は自分で作るか、自分から何らかのアクションを起こしてたどり着く必要がある。そういうこともわからなかったから本当に愚かだったと思う。イカれた自意識を持て余した哀れな大学生だった。

 2020年4月、コロナで引きこもり生活が始まったのと同時に学部に進学し、経済学に没頭するようになった。リモート環境下でも持て余されたやる気は健在で、神学論争の代わりに異端派の教員と異端論争をしていた。ゼミでイギリスの経済学者デビット・リカードに関して取り上げる機会があったが、自分はリカードの言っていることはすべて間違いであると感じていたため、「発表する意味がない」と言って自分の発表を速攻で終わらせたこともあった。通常、経済学部のゼミでは何もしなくても「優」が来るが、発表を速攻で終わらせたのに加えて集団発表会をボイコットしたため、自分の成績は一個下の「良」だった。別のゼミでは老教授とアンチ・経済学の議論をしたり、また別のゼミでは上級生を詰めたりしていた。

 経済学部生にしては珍しく、大学院に行こうと考えた。持て余したやる気を学問に費やそうと思ったためである。海外の大学の教員をやられている方が運営するコミュニティに入り、大学院進学を目指して日々勉強していた。大学3年生のことである。

 最終学年への進学も近づいた3月のある日のこと、すごいやつと出会った。名前は忘れたが、自分の質問に完ぺきに応えるすさまじい人がいた。博士課程の人かな?何歳だろうと思って聞いてみると、なんと2年生の人であった。これはかなわないと思い、大学院の進学はやめることにした。親との仲が悪化したため、あともう3年無収入なのに耐えられず、さっさと仕事を見つけて家を出たいと思ったのも理由である。何はともあれ、就職活動を始めることにした。経済学部の学生としてはかなり遅いほう、大学3年生・3月のことである。

学生の頃(就活)

 昔から技術が好きだった。小学生の頃はPSPを改造してモンハン3rdで遊んでいたり、中学生でMinecraftにはまって英語を覚えたり、高校生の頃は珍しく自分のPCを持ち、部活でVBAのアプリを作って利用していた。自閉症患者には特定の領域に強い関心を持つ性質があるが、自分にとってはその対象が「技術」だった。そういうわけなのでIT系を目指すことにした。

 ITの仕事をやっている方ならわかると思うが、一口に「IT系」といっても上流工程から下流工程、SIerからスタートアップ、フロントエンドからインフラまで、実際にやることは千差万別である。自分は上流工程を目指すことにした。理由はホワイトだからだった。当時の自分はすべてを恐れ、自分には長時間労働など不可能だと考えていた。周りのものすべてを攻撃していたにもかかわらず、周りのものすべてを恐れていた。

 話は変わるが、ホワイト企業というのは温厚な人間の集まりである。ワークライフバランスというのは守るべきライフを持つ人にとっての価値観であり、守るべきをライフ持つ人はたいてい温厚である。燃えるナイフの残穢(ざんえ)が残っていた自分とは明らかに相性が悪く、面接の出来は散々だった。ナイフを持ちながら一般人の群れに紛れ込もうとするようなものだ。今思えば、面接官たちは人を見る目があったと思う。

 かなり心に来るものはあったが、面接の本を読んで勉強したり、数少ない友人に手伝ってもらったり、面接官がたまたまイカれていたこともあり、なんとかホワイト企業の一角に滑り込むことはできた。2021年、大学4年生の6月のことである。就職活動での経験をもとに「健常者エミュレータ」を書いた。

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 それからなんやかんやあって、卒論やらなんやらをクリアし、卒業が確定した大学3年生の2月、「健常者エミュレータ事例集」を作った。そして大学を卒業した。

就職した後

 そして社会人になった。しばらくは研修の期間で、報連相の具体的なやり方を学んだり、CIDRブロックとかルーターがどうこう、Java beansがどうこうみたいな話をこなしながら、並行してずっと健常者エミュレータ事例集の改良をやっていた。Next.jsを学んで投稿用のフォームを作ったりした。

 「健常者エミュレータ事例集」は思ったより流行った。深夜のノリで作ったものが想定していたより流行ってしまい、ルールの整備や機能の追加を急いでやったりしていた。

 あれ、そもそもなんでおれこんな会社にいるんだっけ?自分にはハードなところは無理だと思ったから、あえてぬるいところを選んだ。健常者エミュレータ事例集の運営を通じて、もっとハードなことやっても全然いけるなと思った。もっと本能のままに生きても意外と飯食っていけるんじゃね?心を解き放ってみない?

 そういうわけで転職活動を始めたら、運よくスタートアップに拾われたのでそこに行くことにした。結果的に「もっと本能のままに生きても意外と飯食っていけるんじゃね?」という直感は正しく、今も生きていられている。これでよかったんだと思う。理由のない恐怖は克服できた。これからはどうする?